アカネちゃんの大砲 ― 2006年09月15日 17時25分19秒
アカネちゃんが転校してきたのは、いつにも増して暑かった夏休みも終わって二学期に入った頃だった。
アカネちゃんはおかっぱ頭にぎょろりとした大きな目を光らせて、黙っているとなんだか怒っているように見えた。話をしてみてもやっぱりにこりともせず、大人びた口調で「なんだかなぁ」というのが口癖だった。
アカネちゃんの家はいわゆるサーカス団で、巡業でこの小さな町にやって来ていた。だからまたすぐに引っ越さなくちゃいけないんだよ、とアカネちゃんは少し淋しそうに言った。
アカネちゃんはサーカスで玉乗りをやっているらしい。よかったら見に来なよ、と招待券をもらったが、親は一人でサーカスを見に行くことを許してはくれなかった。
サーカスが休みの日には、アカネちゃんは僕と一緒に遊んだ。なぜそんな気難しそうなアカネちゃんが僕なんかと遊ぶのかよくわからなかったが、アカネちゃんは「サーカスにはキミみたいな子はいないからね」と、つまらなそうに言うだけだった。
ちょうどアカネちゃんのサーカスがやってきてしばらくした頃から、この町では時々建物(家とかお店とか物置小屋とか)が爆破される事件が起きていた。被害者の住所、年齢、性別、職業はバラバラで、特に関係も無いようだった。今のところ死人は出ていないが、三人が重軽傷を負って、二人が精神的なダメージを受けて入院していた。
僕の家で、外出する両親に留守番を頼まれて遊んでいたとき、(どちらが言い出したわけでもないが)アカネちゃんとお医者さんごっこをした。
僕たちは懐中電灯を持って押し入れの中に入ると、まずアカネちゃんがパンツを下ろして布団の上に横になった。僕は「どれどれ」と言って、アカネちゃんの足を広げると、アカネちゃんの体の中心に懐中電灯を当てた。それは浜辺に打ち上げられた桜貝のように頼りなく押し黙っていて、僕が指の先を貝の肉にあてがうと、やんわりと拒絶するように蠢いた。
今度は僕の、いやアカネちゃんの番だ。アカネちゃんは僕のおちんちんを見て「小さな大砲みたいだね」と、ほめたのかけなしたのかよくわからない感想を言った。
そして間近によってくんくんと匂いを嗅いだかと思うと、アカネちゃんは「オトナはこうするんだよ」と言って、いきなりおちんちんをぱっくりとくわえた。まるでおちんちんの先から温かい蜜を注ぎ込まれたみたいに、僕の腰は甘く痺れた。
おちんちんにもちょっとした変化があったらしく、アカネちゃんは突然むせ始め、その拍子におちんちんを思い切り噛んでしまった。
僕の叫びは押し入れ中にこだまし、僕は両手でおちんちんを押さえながら布団の上をごろごろと転げ回った。
アカネちゃんはそんな僕を懐中電灯で照らしながら、珍しく大きな声でゲラゲラと笑った。僕もそんなアカネちゃんを見て、(まだおちんちんは痛かったけど)大きな声でゲラゲラと笑った。
僕は家の戸締まりをすると、何だかちょっと大人になったような気分に少し酔いながら、アカネちゃんと一緒に近くの駄菓子屋に行った。
僕たちはお菓子をいくつか食べた後、別れてそれぞれ好きなオモチャのクジ引きをした。僕は一等で大きなモデルガンが当たるクジを五回も引いたが、今まで引いたほとんどのクジがそうだったように、このクジもまた当たるという運命から遠く隔絶されているのだという永遠の真理を、ただ念入りに確認しただけだった。
僕の手は、手のひらにすっぽり収まってしまうようなプラスティック成型のぐにゃぐにゃしたコルトやらスミスアンドウェッソンやらで一杯になった。
店先で六回目のクジを引こうかどうか悩んでいると、奥の方で店主のおばあさんの大きな声がした。
「――あんた、何してんの?」
店の奥ではおばあさんとアカネちゃんがにらみ合っていた。アカネちゃんはおばあさんに腕をつかまれ、胸には着せ替え人形の箱を大事そうに抱えていた。
「あんた、これ当たってないのに勝手に取っちゃ駄目じゃないか!」
「当たったもん。さっき当たったの見てたでしょ?」
「知らないよ。当たってないんだから、それ返しなさい! ほんとに、どこの子だい」と言って、おばあさんはアカネちゃんの手から人形をひったくった。アカネちゃんは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐにキッとおばあさんをその大きな目でもう一度にらみつけた。
そしてアカネちゃんはスカートのポケットからハズレのアクセサリーをバラバラと床にまき散らすと、道路に出て振り向き「当たったんだもん!」と叫び、パタパタと走って帰っていった。
「まったく、なんて子だろうね。あんたもあんな子と付き合ってちゃ駄目だよ」
おばあさんはすっかりクジを引く気を無くし、呆けたような顔をして立っている僕に向かって言うと、腰を折り曲げたままゆっくりと奥に引っ込んでいった。
それからしばらくたったある日、学校の帰りにアカネちゃんと行った駄菓子屋に寄ってびっくりした。
駄菓子屋の店先が、まるで訓練中のヘリコプターが墜落したみたいにぺしゃんこに潰れていたのだ。しかし辺りにヘリコプターの残骸は見あたらず、僕はそのまましばらくそこに立ち尽くしていた。
家に帰って両親に話を聞くと、近所の人の話では何やら夜中にドーンという音がしたらしく、朝になってみると店はめちゃくちゃで、奥で寝ていたおばあさんは朝方病院に運び込まれたが、怪我は無かったもののショックで危ない状態が続いているそうだ。結局何が起こったのか誰にもわからないようだった。
学校でアカネちゃんにもこの話をしてみたが、「あっ、そう」と言うだけでまるで興味は無いみたいだった。
そういえばアカネちゃんはこのところ学校でとても楽しそうだ。なにしろアカネちゃんの嫌いな子や、アカネちゃんをいじめたりする子や、アカネちゃんを叱っていた先生の家はみんな爆破されてしまって、ずっと学校に来ていなかったのだ。
なんだか僕はサーカス小屋の中が気になってしようがなくなっていたが、丁度アカネちゃんがサーカスが休みの日に小屋の中を見せてあげると言ってくれたので、早速ついて行くことにした。
意外に大きな赤いテントはひっそりとして、まるで安普請のモスクのようだった。辺りには大きな張り子の人形や、檻などが置かれ、その奥には何台ものトレーラーが停まっていた。
アカネちゃんは、自分の乗る玉の置いてある小屋の中に僕を連れて行った。小屋の中はひんやりとして薄暗く、無宗教の僕もなんだか敬けんな気持ちになった。
アカネちゃんはその自分の背丈と変わらない大きさの玉の一つにひょいと飛び乗ると、僕のまわりをくるくると回ってみせた。
僕の平板な拍手が響き、アカネちゃんはそれでも少し血色ばった得意そうな顔で、僕の肩に手をついて目の前に降り立った。
ふと小屋の隅に大小二門の大砲が置いてあるのが見えた。大きい方はいかにも無骨な風情だが、小さい方は白地にカラフルな星のペイントがしてあった。
「あれはね、出し物の人間大砲で子供を吹っ飛ばすやつ。大きい方ね。小さいのは紙吹雪を吹き出すの。まあ人間は本当に吹っ飛ばすわけじゃないけど、紙吹雪の方はちゃんと火薬が入ってるから結構な威力よ。私もムシャクシャしたときはあれに弾を込めて吹っ飛ばすの。最高の気分よ」
アカネちゃんは、僕の顔が引きつっているのを見ると
「あら? 吹っ飛ばして何か悪いの? だって嘘つきはいくら嘘をついてても、いつだって正直になれる権利を持ってるでしょ? それと同じ事よ」と不思議そうな顔で言った。
僕は必死で平静を装い、しきりに感心した顔で何度もうなずいた。
「あのね――」急に改まった様子でアカネちゃんが言った。
「実はここでの公演ももう少しで終わりになるの。だからそろそろまた引っ越すことになるのね。もちろん学校も転校するんだよ。だからキミとももうお別れしなくちゃいけなくなるの」
僕は淋しいようなホッとしたような複雑な気持ちで、そして恐らくは複雑な表情を顔に浮かべて聞いていた。
「でもね、転校を繰り返してる私だからわかるんだけど、キミは転校生にとっては最高の友達だね。何の負担も与えずに、何の思い出も残さない。また転校生がやってきたら真っ先に友達になってあげるといいよ――」
赤い小屋をバックに、アカネちゃんが「なんだかなぁ」といった顔で手を振って見送ってくれた。
その夜、僕はおしっこがしたくなって布団から抜け出すと、妙に明るい光が差し込んでいるのに気がついて、窓に近寄りガラガラと開けてみた。
すると下の道から二階の窓に向かって、鋭いサーチライトが飛び込んできた。慣れるのを待ちながらよく目を凝らすと、道には白い大砲の隣に、アカネちゃんが赤いTシャツと、なぜか下半身裸で立っていた。そして白い砲身は紛れもなく二階の窓を目指していた。
突然アカネちゃんは「コノヤロー!」と叫ぶと、シュッと大砲に点火した。轟音に包まれた次の瞬間、僕の部屋は煙と粉塵に包まれて、バラバラになった僕の体とともに瓦礫が崩れ落ち重なっていった。それでも僕は大砲の隣で小躍りしているアカネちゃんの、ふわふわと白く浮かぶその股間をぼんやりと眺めるうち、たまらなくおちんちんがムズムズしてきて、こみ上げてくる熱い固まりをこらえきれず思い切り放出した――。
朝になって、もうおねしょする歳でもあるまいに、とお母さんにひどく叱られてしまった。
アカネちゃんがいなくなってもう三ヶ月になろうとしている。爆破事件はそれ以来一件も起きていない。町はようやく小さな平和を取り戻したが、僕の心は未だに瓦礫に覆われたまま、アカネちゃんの柔らかな貝を夢見ていた。
アカネちゃんはおかっぱ頭にぎょろりとした大きな目を光らせて、黙っているとなんだか怒っているように見えた。話をしてみてもやっぱりにこりともせず、大人びた口調で「なんだかなぁ」というのが口癖だった。
アカネちゃんの家はいわゆるサーカス団で、巡業でこの小さな町にやって来ていた。だからまたすぐに引っ越さなくちゃいけないんだよ、とアカネちゃんは少し淋しそうに言った。
アカネちゃんはサーカスで玉乗りをやっているらしい。よかったら見に来なよ、と招待券をもらったが、親は一人でサーカスを見に行くことを許してはくれなかった。
サーカスが休みの日には、アカネちゃんは僕と一緒に遊んだ。なぜそんな気難しそうなアカネちゃんが僕なんかと遊ぶのかよくわからなかったが、アカネちゃんは「サーカスにはキミみたいな子はいないからね」と、つまらなそうに言うだけだった。
ちょうどアカネちゃんのサーカスがやってきてしばらくした頃から、この町では時々建物(家とかお店とか物置小屋とか)が爆破される事件が起きていた。被害者の住所、年齢、性別、職業はバラバラで、特に関係も無いようだった。今のところ死人は出ていないが、三人が重軽傷を負って、二人が精神的なダメージを受けて入院していた。
僕の家で、外出する両親に留守番を頼まれて遊んでいたとき、(どちらが言い出したわけでもないが)アカネちゃんとお医者さんごっこをした。
僕たちは懐中電灯を持って押し入れの中に入ると、まずアカネちゃんがパンツを下ろして布団の上に横になった。僕は「どれどれ」と言って、アカネちゃんの足を広げると、アカネちゃんの体の中心に懐中電灯を当てた。それは浜辺に打ち上げられた桜貝のように頼りなく押し黙っていて、僕が指の先を貝の肉にあてがうと、やんわりと拒絶するように蠢いた。
今度は僕の、いやアカネちゃんの番だ。アカネちゃんは僕のおちんちんを見て「小さな大砲みたいだね」と、ほめたのかけなしたのかよくわからない感想を言った。
そして間近によってくんくんと匂いを嗅いだかと思うと、アカネちゃんは「オトナはこうするんだよ」と言って、いきなりおちんちんをぱっくりとくわえた。まるでおちんちんの先から温かい蜜を注ぎ込まれたみたいに、僕の腰は甘く痺れた。
おちんちんにもちょっとした変化があったらしく、アカネちゃんは突然むせ始め、その拍子におちんちんを思い切り噛んでしまった。
僕の叫びは押し入れ中にこだまし、僕は両手でおちんちんを押さえながら布団の上をごろごろと転げ回った。
アカネちゃんはそんな僕を懐中電灯で照らしながら、珍しく大きな声でゲラゲラと笑った。僕もそんなアカネちゃんを見て、(まだおちんちんは痛かったけど)大きな声でゲラゲラと笑った。
僕は家の戸締まりをすると、何だかちょっと大人になったような気分に少し酔いながら、アカネちゃんと一緒に近くの駄菓子屋に行った。
僕たちはお菓子をいくつか食べた後、別れてそれぞれ好きなオモチャのクジ引きをした。僕は一等で大きなモデルガンが当たるクジを五回も引いたが、今まで引いたほとんどのクジがそうだったように、このクジもまた当たるという運命から遠く隔絶されているのだという永遠の真理を、ただ念入りに確認しただけだった。
僕の手は、手のひらにすっぽり収まってしまうようなプラスティック成型のぐにゃぐにゃしたコルトやらスミスアンドウェッソンやらで一杯になった。
店先で六回目のクジを引こうかどうか悩んでいると、奥の方で店主のおばあさんの大きな声がした。
「――あんた、何してんの?」
店の奥ではおばあさんとアカネちゃんがにらみ合っていた。アカネちゃんはおばあさんに腕をつかまれ、胸には着せ替え人形の箱を大事そうに抱えていた。
「あんた、これ当たってないのに勝手に取っちゃ駄目じゃないか!」
「当たったもん。さっき当たったの見てたでしょ?」
「知らないよ。当たってないんだから、それ返しなさい! ほんとに、どこの子だい」と言って、おばあさんはアカネちゃんの手から人形をひったくった。アカネちゃんは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐにキッとおばあさんをその大きな目でもう一度にらみつけた。
そしてアカネちゃんはスカートのポケットからハズレのアクセサリーをバラバラと床にまき散らすと、道路に出て振り向き「当たったんだもん!」と叫び、パタパタと走って帰っていった。
「まったく、なんて子だろうね。あんたもあんな子と付き合ってちゃ駄目だよ」
おばあさんはすっかりクジを引く気を無くし、呆けたような顔をして立っている僕に向かって言うと、腰を折り曲げたままゆっくりと奥に引っ込んでいった。
それからしばらくたったある日、学校の帰りにアカネちゃんと行った駄菓子屋に寄ってびっくりした。
駄菓子屋の店先が、まるで訓練中のヘリコプターが墜落したみたいにぺしゃんこに潰れていたのだ。しかし辺りにヘリコプターの残骸は見あたらず、僕はそのまましばらくそこに立ち尽くしていた。
家に帰って両親に話を聞くと、近所の人の話では何やら夜中にドーンという音がしたらしく、朝になってみると店はめちゃくちゃで、奥で寝ていたおばあさんは朝方病院に運び込まれたが、怪我は無かったもののショックで危ない状態が続いているそうだ。結局何が起こったのか誰にもわからないようだった。
学校でアカネちゃんにもこの話をしてみたが、「あっ、そう」と言うだけでまるで興味は無いみたいだった。
そういえばアカネちゃんはこのところ学校でとても楽しそうだ。なにしろアカネちゃんの嫌いな子や、アカネちゃんをいじめたりする子や、アカネちゃんを叱っていた先生の家はみんな爆破されてしまって、ずっと学校に来ていなかったのだ。
なんだか僕はサーカス小屋の中が気になってしようがなくなっていたが、丁度アカネちゃんがサーカスが休みの日に小屋の中を見せてあげると言ってくれたので、早速ついて行くことにした。
意外に大きな赤いテントはひっそりとして、まるで安普請のモスクのようだった。辺りには大きな張り子の人形や、檻などが置かれ、その奥には何台ものトレーラーが停まっていた。
アカネちゃんは、自分の乗る玉の置いてある小屋の中に僕を連れて行った。小屋の中はひんやりとして薄暗く、無宗教の僕もなんだか敬けんな気持ちになった。
アカネちゃんはその自分の背丈と変わらない大きさの玉の一つにひょいと飛び乗ると、僕のまわりをくるくると回ってみせた。
僕の平板な拍手が響き、アカネちゃんはそれでも少し血色ばった得意そうな顔で、僕の肩に手をついて目の前に降り立った。
ふと小屋の隅に大小二門の大砲が置いてあるのが見えた。大きい方はいかにも無骨な風情だが、小さい方は白地にカラフルな星のペイントがしてあった。
「あれはね、出し物の人間大砲で子供を吹っ飛ばすやつ。大きい方ね。小さいのは紙吹雪を吹き出すの。まあ人間は本当に吹っ飛ばすわけじゃないけど、紙吹雪の方はちゃんと火薬が入ってるから結構な威力よ。私もムシャクシャしたときはあれに弾を込めて吹っ飛ばすの。最高の気分よ」
アカネちゃんは、僕の顔が引きつっているのを見ると
「あら? 吹っ飛ばして何か悪いの? だって嘘つきはいくら嘘をついてても、いつだって正直になれる権利を持ってるでしょ? それと同じ事よ」と不思議そうな顔で言った。
僕は必死で平静を装い、しきりに感心した顔で何度もうなずいた。
「あのね――」急に改まった様子でアカネちゃんが言った。
「実はここでの公演ももう少しで終わりになるの。だからそろそろまた引っ越すことになるのね。もちろん学校も転校するんだよ。だからキミとももうお別れしなくちゃいけなくなるの」
僕は淋しいようなホッとしたような複雑な気持ちで、そして恐らくは複雑な表情を顔に浮かべて聞いていた。
「でもね、転校を繰り返してる私だからわかるんだけど、キミは転校生にとっては最高の友達だね。何の負担も与えずに、何の思い出も残さない。また転校生がやってきたら真っ先に友達になってあげるといいよ――」
赤い小屋をバックに、アカネちゃんが「なんだかなぁ」といった顔で手を振って見送ってくれた。
その夜、僕はおしっこがしたくなって布団から抜け出すと、妙に明るい光が差し込んでいるのに気がついて、窓に近寄りガラガラと開けてみた。
すると下の道から二階の窓に向かって、鋭いサーチライトが飛び込んできた。慣れるのを待ちながらよく目を凝らすと、道には白い大砲の隣に、アカネちゃんが赤いTシャツと、なぜか下半身裸で立っていた。そして白い砲身は紛れもなく二階の窓を目指していた。
突然アカネちゃんは「コノヤロー!」と叫ぶと、シュッと大砲に点火した。轟音に包まれた次の瞬間、僕の部屋は煙と粉塵に包まれて、バラバラになった僕の体とともに瓦礫が崩れ落ち重なっていった。それでも僕は大砲の隣で小躍りしているアカネちゃんの、ふわふわと白く浮かぶその股間をぼんやりと眺めるうち、たまらなくおちんちんがムズムズしてきて、こみ上げてくる熱い固まりをこらえきれず思い切り放出した――。
朝になって、もうおねしょする歳でもあるまいに、とお母さんにひどく叱られてしまった。
アカネちゃんがいなくなってもう三ヶ月になろうとしている。爆破事件はそれ以来一件も起きていない。町はようやく小さな平和を取り戻したが、僕の心は未だに瓦礫に覆われたまま、アカネちゃんの柔らかな貝を夢見ていた。
最近のコメント