赤いベリーのタルト ― 2008年04月14日 13時49分52秒
彼女の目の前にはまだ手が付けられていない赤いベリーのタルトと一杯のオーガニックブレンドコーヒーが置かれていた。そしてその向こうにはミウが休みにもかかわらず制服姿で座っていた。その青ざめた素足にはサンダルが辛うじてひっかかっていた。
「で、あなたが殺したの?」
ミウは首を横に振った。
「わかんないよ。だってあいつと母親の現場を目撃した時、意識がすうっと遠くなって後のことは全然覚えてないんだ」
「それで気がついたら自分のベッドに寝ていたんだよね」
ミウは首を縦に振った。
「だけどどういうわけか、わたし裸だったの。‘一糸まとわず’っていうやつ? それにうなされて目を覚ますとなんだか体中が火照ってて、粘り気のある汗がべっとりまとわりついてるの」まだ火照りの余韻が浮かんでいるような顔でミウは言った。
「それで?」
「それで、ぼうっとしながら起き上がって手近にあった制服を着て、母親の寝室を覗いてみたら母親とあいつがベッドの上で血だらけになってたの。もちろん全裸で二人が折り重なってたみたいだけど、でこぼこした真っ赤な山みたいだったわ。ちょうどそんな感じ」とミウは彼女の前の赤いベリーのタルトを指さした。
「で、わたしに電話してきた、と」
「そうなの。もうわたしパニックになっちゃって。ねえ、わたしどうしたら……」
「まずは彼氏とお母さんの関係だけど、何も気付かなかったの?」
「うん、そういえばデートしても何かと理由を付けちゃわたしの家に来たがってたわね。でもお母さんと特に親しそうに話をしてたわけでもないし、お母さんも特にあいつのことを尋ねたりしなかったわよ。今思えばむしろお互い避けてたようなところもあったわね」
「ふうん、怪しいといえば怪しいわね」
彼女はコーヒーを一口すすり、縁に残った唇の跡を親指の腹でぬぐった。
「お願いよ。こんなこと相談できるのはあなたしかいないんだから。何とかして」
彼女はまるでミウの言葉が聞こえていないかのように、赤いベリーのタルトにフォークを入れて潰すようにして混ぜてから、その赤い塊を一口すくってゆっくりと口に運んだ。
「で、あなたが殺したの?」
ミウは首を横に振った。
「わかんないよ。だってあいつと母親の現場を目撃した時、意識がすうっと遠くなって後のことは全然覚えてないんだ」
「それで気がついたら自分のベッドに寝ていたんだよね」
ミウは首を縦に振った。
「だけどどういうわけか、わたし裸だったの。‘一糸まとわず’っていうやつ? それにうなされて目を覚ますとなんだか体中が火照ってて、粘り気のある汗がべっとりまとわりついてるの」まだ火照りの余韻が浮かんでいるような顔でミウは言った。
「それで?」
「それで、ぼうっとしながら起き上がって手近にあった制服を着て、母親の寝室を覗いてみたら母親とあいつがベッドの上で血だらけになってたの。もちろん全裸で二人が折り重なってたみたいだけど、でこぼこした真っ赤な山みたいだったわ。ちょうどそんな感じ」とミウは彼女の前の赤いベリーのタルトを指さした。
「で、わたしに電話してきた、と」
「そうなの。もうわたしパニックになっちゃって。ねえ、わたしどうしたら……」
「まずは彼氏とお母さんの関係だけど、何も気付かなかったの?」
「うん、そういえばデートしても何かと理由を付けちゃわたしの家に来たがってたわね。でもお母さんと特に親しそうに話をしてたわけでもないし、お母さんも特にあいつのことを尋ねたりしなかったわよ。今思えばむしろお互い避けてたようなところもあったわね」
「ふうん、怪しいといえば怪しいわね」
彼女はコーヒーを一口すすり、縁に残った唇の跡を親指の腹でぬぐった。
「お願いよ。こんなこと相談できるのはあなたしかいないんだから。何とかして」
彼女はまるでミウの言葉が聞こえていないかのように、赤いベリーのタルトにフォークを入れて潰すようにして混ぜてから、その赤い塊を一口すくってゆっくりと口に運んだ。
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