星に願いを ― 2008年07月02日 20時49分23秒
「――ユウスケ、やばいよ。アイツら、アンタのこと探してたよ」
ナオコはそう言いながら、少し楽しそうに自分の肩を僕の肩にぶつけてきた。
「ああ」
「ああ、ってのんきね。でも今日は見つかりっこないよ。アイツらまさかアタシと一緒にいるなんて思ってないからさ」
「そこはオレももひとつよくわからないとこなんだけどさ。オマエ、なんでこうやってオレといるの?」
「ウーン、そこはヒジョーに難しいとこなんだけどね。いいじゃないの、アンタとアタシが楽しければ」
「オレ、オマエといて楽しいなんて言ったか?」
「あら、楽しくないの? アタシはこんなに楽しいのに。ま、素直なオトコなんてのも魅力ないしね」
夏の夜にざわめく海辺にバイクを停めて、僕たちは人気のない砂浜に座り、暗い海から漂う誘うような香りに包まれていた。やがて遠くで大きな音が轟くと、ナオコは立ち上がり砂浜を駆け上がった。
「ねえ、今日、花火大会だよ」
僕たちは土手にバイクを置くと、町の中心を流れる川にかかる大きな橋の欄干にもたれて、河原から打ち上げられる花火を見た。
「あ、そうだ」
ナオコはバッグをひとしきりゴソゴソしたかと思うと、一冊のペーパーバックを取り出して僕の目の前に差し出した。ソール・ベローだった。
「はい、これ。読みたいって言ってたでしょ」
恐らく僕が読みたいと言ったとしたらそれはポール・セローだったと思うが、もちろん「Seize the Day」だって悪くない。
「ん、これ注文票挟んであるじゃん。まさか、オマエ……」
「バレた? うん、ちょっとついでがあったもんだから」
「何のついでだよ、ったく」
花火が終わった後も僕たちはそのまま欄干にもたれて、まるで花火の燃えかすのように瞬いている星空を眺めていた。すると一筋の流れ星がスーッと天上から山陰を目指して降りてきた。僕が慌てて振り向くと、ナオコは目を閉じて両手を合わせ、じっと流れ星の消え去る方向に向かって頭を垂れていた。
http://bunshoujuku.asablo.jp/blog/2008/07/17/3633065
ナオコはそう言いながら、少し楽しそうに自分の肩を僕の肩にぶつけてきた。
「ああ」
「ああ、ってのんきね。でも今日は見つかりっこないよ。アイツらまさかアタシと一緒にいるなんて思ってないからさ」
「そこはオレももひとつよくわからないとこなんだけどさ。オマエ、なんでこうやってオレといるの?」
「ウーン、そこはヒジョーに難しいとこなんだけどね。いいじゃないの、アンタとアタシが楽しければ」
「オレ、オマエといて楽しいなんて言ったか?」
「あら、楽しくないの? アタシはこんなに楽しいのに。ま、素直なオトコなんてのも魅力ないしね」
夏の夜にざわめく海辺にバイクを停めて、僕たちは人気のない砂浜に座り、暗い海から漂う誘うような香りに包まれていた。やがて遠くで大きな音が轟くと、ナオコは立ち上がり砂浜を駆け上がった。
「ねえ、今日、花火大会だよ」
僕たちは土手にバイクを置くと、町の中心を流れる川にかかる大きな橋の欄干にもたれて、河原から打ち上げられる花火を見た。
「あ、そうだ」
ナオコはバッグをひとしきりゴソゴソしたかと思うと、一冊のペーパーバックを取り出して僕の目の前に差し出した。ソール・ベローだった。
「はい、これ。読みたいって言ってたでしょ」
恐らく僕が読みたいと言ったとしたらそれはポール・セローだったと思うが、もちろん「Seize the Day」だって悪くない。
「ん、これ注文票挟んであるじゃん。まさか、オマエ……」
「バレた? うん、ちょっとついでがあったもんだから」
「何のついでだよ、ったく」
花火が終わった後も僕たちはそのまま欄干にもたれて、まるで花火の燃えかすのように瞬いている星空を眺めていた。すると一筋の流れ星がスーッと天上から山陰を目指して降りてきた。僕が慌てて振り向くと、ナオコは目を閉じて両手を合わせ、じっと流れ星の消え去る方向に向かって頭を垂れていた。
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