無花果(3) ― 2007年03月08日 15時58分28秒
リカもリカなりに学生生活を満喫しているようだった。友達も大勢出来たようだし、服装や髪型も垢抜けてきた。もともとスレンダーでスタイルも良かったので、街を歩けば男の目もずいぶん引くようになった。
リカは最初喫茶店でアルバイトをしていたが、リカ目当ての客もかなり増えてきた頃、リカのお尻を触った客の男の頭を、持っていた大きなパフェグラスで殴りつけて大怪我をさせてしまい、今は図書館で働きながら司書になるための勉強をしていた。リカは図書館で働くのがかなり気に入ったようだった。
「そりゃ図書館にはお尻を触ってくるような奴はいないだろうからね。だいいちスタイルが良くても勤まる仕事ってのはそれだけで貴重だ」
と僕がからかうと、リカは少しむくれながら言った。
「そうじゃなくてぇ。図書館って本屋さんと違って取ってつけたような教養主義を押し付けたりしないでしょ? 整理された膨大な教養そのものが鎮座ましましてるっていう感じがたまらないし、そこから滲み出した湧き水のような恵みを皆があちこちから掬いに来るのよ。これって凄くない?」
「それこそ教養主義の押し売りっぽいぞ。おまけに権威主義的で僕はあんまり好きにはなれないけどな」
「そぉ? ま、いいけどね」
僕は何よりリカがそんな友達とか服とかアルバイトとかいった‘普通’のことに夢中になってくれているのがとても嬉しかったし安心もできた。もちろんリカも普通であることの幸せは十分感じていたと思う。
*
バイト先の休憩室で缶コーヒーを飲んでいると、入口のカーテンをくぐってヨウコさんが入ってきた。休憩室には他に誰もおらず僕たちは二人きりだった。
エル字型に並んだソファの交点部分に僕たちは互いに九十度に向き合って座り、黙っていた。ヨウコさんは髪をいじりながら念入りに毛先のチェックをしていた。僕は制服に身を包んでいるせいで今はあまり目立たないヨウコさんの胸元をじっと見ていた。そういえばこの前胸は触らなかったな、などと考えているとまた甘い蜜が頭の中で溶け出したようにぼうっとした。
「触る?」
そう言うとヨウコさんは僕の方に体を寄せて、少し胸を突き出すような格好をした。
「服は脱げないけどね」
僕はヨウコさんの胸に手を当てて軽く揉みはじめた。ヨウコさんは目をつぶり、ゆっくりと体を揺らしていたが、手をスッと僕の股間に伸ばすと、既に張り詰めている僕を確かめて、うっすらと微笑んだ。
「今度の土曜日ね――」
ヨウコさんは目を閉じたまま、僕の方を向いて突然切り出した。
「ダンナの誕生日なんだ。もし良かったら彼女連れてウチに遊びに来ない?」
「いいですけど、せっかくの誕生日にお邪魔じゃないんですか?」
僕もヨウコさんの胸に手を置いたまま答えた。
「あんた達みたいに若い子はそんなことないだろうけど、誕生日に二人だけでいるってのもなかなか辛いもんなのよ。わたし達くらいになると」
ヨウコさんは僕の股間を握る手に少し力を込めた。
「そんなもんですか」
僕はヨウコさんの胸の先端を指の先だけでくすぐるように撫でた。
「だからまあ誕生日とかそんなに気にしないで、気楽に来てくれればいいのよ」
そう言うとヨウコさんは急いで手を引っ込めた。カーテンの向こうからパートのおばさん達の声が近づいてきた。僕も慌てて手を引っ込めると
「じゃあ」
と言ってヨウコさんは立ち上がり、スッと休憩室を出て行った。
僕はヨウコさんと入れ違いに休憩室に入ってきたおばさん達に股間の様子を悟られないようにするため、しばらくそこを動けなかった。
リカはあまり気乗りしない様子だったが、結局僕が半ば押し切るような形で週末少し時間は早かったが僕達はヨウコさんの家を訪ねた。
ヨウコさんは全身で相好を崩しながら、僕達を迎えてくれた。
リカとアキラさんが顔を会わせた時、二人とも驚いた様子で顔を見合わせていた。アキラさんはリカの働く図書館によく通っていて、美術書や哲学書を読み漁っているのだそうだ。貸し出しカウンターにいるリカとは当然顔見知りだった。これには僕とヨウコさんの方が驚いた。
「さてと、まだ何も用意してないのよ。買い物に行かなくちゃ。重いからユウくん付いてきてくれる?」
僕はリカの様子をチラッと見て大丈夫そうだったので、ヨウコさんと一緒に近くのスーパーまで出かけた。スーパーに着くまでの間、ヨウコさんは一言も喋らなかった。僕も隣で黙ったまま付いていった。
僕達は山盛り二カゴの買い物をレジに持ち込んで会計をした。このスーパーでは既にバーコード・スキャナで値段を読み取るようになっていたが、どう見ても僕が手でレジを打った方が速いような気がした。ヨウコさんにもレジの女の子にも何も言わなかったけど。レジを通って更に山盛りになった二カゴの買い物を、僕達は慎重に三つの袋に詰め、二つを僕が一つをヨウコさんが持った。
店を出るとすっかり陽は落ちていて、街の果てに少し紫色とオレンジのグラデーションが残る程度になっていた。僕達は商店街を出ると、雑居ビルの立ち並ぶ通りを歩いていたが、二人ともふと立ち止まって、人目につきにくいビルとビルの間の暗がりを見ていた。ふとヨウコさんは僕の手を引っ張ると、その片方のビルに入っていった。二階に上がるとカラオケの音がうるさく響いていて、僕達は三階の誰もいないオフィスフロアのトイレに駆け込んだ。三つの買い物袋をドサッドサッとトイレの床に置くのももどかしく、僕達はお互いの体をまさぐった。重なり合うカラオケの歌声を聞きながら、僕達は性急に貪りあった――。
「ごめーん、遅くなっちゃって。何にしようかなかなか決まらなかったんだもん。ねえ、ユウくん」
僕達はすっかり待ちくたびれた様子のアキラさんとリカの目の前に買い物袋を戦利品のように得意げに置くと、ヨウコさんとリカが早速夕食の準備に取り掛かった。卵が二個割れていて、豆腐が崩れていたのには少しヒヤッとさせられた。
「リカちゃんとキミは幼なじみなんだってね」
アキラさんが興味深そうに僕に訊ねた。
「そして今は恋人同士だ。ありそうであまりない関係かもしれないな。だからかも知れないけど君たちには少し変わった雰囲気があるね。何て言うのかな、二人の関係性に関してだけど、まるで革命の同志のような透明な意志と硬直した未来のようなものを感じるな。まあ独特だよ」
僕は混乱しながらも納得していた。確かに僕達は互いのために死ねるかもしれないが、お互いの心と体を心底とろけさせ安らがせることは出来ないのかもしれない。
その夜は楽しかった。後ろ髪は引かれたものの僕達は電車のあるうちに引き上げることにした。
*
その後も僕とヨウコさんは関係を持ち続けた。関係? 一体どんな関係なんだ。僕達は決して最後の一線を越えることはなかったし、キスもしたことはなかった。僕達はある意味互いに依存しながらも、互いの感情を持ち込むのは避けた。もちろん話し合って明確に規定したわけでもない。ただそういった関係だったのだ。
リカもいぶかしがる様子を見せないわけではなかったが、彼女は決して僕を問い詰めたり、取り乱したりすることはなかった。僕達はそういう関係だった。
もちろん僕にとってリカは最愛で至福たるべき存在だ。それは何を犠牲にしても守られる必要がある。そうでなければ僕の、そしてリカの存在にどれほどの意味があるのだろうか。
ただ僕が変わっていくのと同様にリカにもこのところ変化が現れた。それはやはりヨウコさんの家に行ってから、徐々にだが僕に会うのを避けるようになったような気がした。たまに連絡が取れないこともあったし、会ってもいつも浮かぬ顔をしていた。
ある日、珍しく突然リカが僕のアパートに現れた。いつにも増して浮かぬ顔をしていたリカは、重そうな口を開いて話し始めた。
リカは妊娠しているという。もう三ヶ月だそうだ。もちろん僕の子供ではない。父親はアキラさんだった。ヨウコさんの家で会って以来、アキラさんが図書館に来るたびに会っていたそうだ。何故そんなことになったのか理由は聞かなかったが、わかるような気はした。
リカは高校に入った頃、父親の子供を堕ろしていた。だから今度はどうしても産みたいのだと言った。アキラさんには聞くまでもなく子供の父親になる気などないだろう。
「わかったよ」
俺は言った。
「子供は産むんだ。僕と一緒に育てよう。もちろんキミがそれでよければだけど」
リカは床にへたり込んで、大声で泣き出した。
「ユウと一緒にいたいよ。ずっとユウと一緒にいたいよ」
もう何を言っているかわからなかったが、リカは吠えるようにそう言って、細い腕を振り上げ僕をポカポカと殴った。
数日経ってリカはアキラさんに会って、もう会わないことを告げた。子供のことは言わずに。
僕もヨウコさんに会わなくて済むようにバイトを辞めた。すぐに新しいバイトを探さなくちゃいけないけど。
*
白い霧がたちこめるあの森の中で、僕はリカを抱いて洞穴の中にいた。僕達の間にはイチジクの葉にくるまれた赤ん坊がスヤスヤと寝息を立てていた。僕はリカの体に触れ、リカは僕の柔らかなペニスを握り締めていた。それは次第に膨張していきやがて隆々とはちきれんばかりに反り返った。リカが思わず声を上げると、赤ん坊が目を覚まし大声で泣き出した。するとたちこめていた霧がスゥッと晴れていき、矢のような鋭い日差しが洞穴の中を乱反射した。
僕とリカは赤ん坊越しに心の底からキスをした――。
(了)
リカは最初喫茶店でアルバイトをしていたが、リカ目当ての客もかなり増えてきた頃、リカのお尻を触った客の男の頭を、持っていた大きなパフェグラスで殴りつけて大怪我をさせてしまい、今は図書館で働きながら司書になるための勉強をしていた。リカは図書館で働くのがかなり気に入ったようだった。
「そりゃ図書館にはお尻を触ってくるような奴はいないだろうからね。だいいちスタイルが良くても勤まる仕事ってのはそれだけで貴重だ」
と僕がからかうと、リカは少しむくれながら言った。
「そうじゃなくてぇ。図書館って本屋さんと違って取ってつけたような教養主義を押し付けたりしないでしょ? 整理された膨大な教養そのものが鎮座ましましてるっていう感じがたまらないし、そこから滲み出した湧き水のような恵みを皆があちこちから掬いに来るのよ。これって凄くない?」
「それこそ教養主義の押し売りっぽいぞ。おまけに権威主義的で僕はあんまり好きにはなれないけどな」
「そぉ? ま、いいけどね」
僕は何よりリカがそんな友達とか服とかアルバイトとかいった‘普通’のことに夢中になってくれているのがとても嬉しかったし安心もできた。もちろんリカも普通であることの幸せは十分感じていたと思う。
*
バイト先の休憩室で缶コーヒーを飲んでいると、入口のカーテンをくぐってヨウコさんが入ってきた。休憩室には他に誰もおらず僕たちは二人きりだった。
エル字型に並んだソファの交点部分に僕たちは互いに九十度に向き合って座り、黙っていた。ヨウコさんは髪をいじりながら念入りに毛先のチェックをしていた。僕は制服に身を包んでいるせいで今はあまり目立たないヨウコさんの胸元をじっと見ていた。そういえばこの前胸は触らなかったな、などと考えているとまた甘い蜜が頭の中で溶け出したようにぼうっとした。
「触る?」
そう言うとヨウコさんは僕の方に体を寄せて、少し胸を突き出すような格好をした。
「服は脱げないけどね」
僕はヨウコさんの胸に手を当てて軽く揉みはじめた。ヨウコさんは目をつぶり、ゆっくりと体を揺らしていたが、手をスッと僕の股間に伸ばすと、既に張り詰めている僕を確かめて、うっすらと微笑んだ。
「今度の土曜日ね――」
ヨウコさんは目を閉じたまま、僕の方を向いて突然切り出した。
「ダンナの誕生日なんだ。もし良かったら彼女連れてウチに遊びに来ない?」
「いいですけど、せっかくの誕生日にお邪魔じゃないんですか?」
僕もヨウコさんの胸に手を置いたまま答えた。
「あんた達みたいに若い子はそんなことないだろうけど、誕生日に二人だけでいるってのもなかなか辛いもんなのよ。わたし達くらいになると」
ヨウコさんは僕の股間を握る手に少し力を込めた。
「そんなもんですか」
僕はヨウコさんの胸の先端を指の先だけでくすぐるように撫でた。
「だからまあ誕生日とかそんなに気にしないで、気楽に来てくれればいいのよ」
そう言うとヨウコさんは急いで手を引っ込めた。カーテンの向こうからパートのおばさん達の声が近づいてきた。僕も慌てて手を引っ込めると
「じゃあ」
と言ってヨウコさんは立ち上がり、スッと休憩室を出て行った。
僕はヨウコさんと入れ違いに休憩室に入ってきたおばさん達に股間の様子を悟られないようにするため、しばらくそこを動けなかった。
リカはあまり気乗りしない様子だったが、結局僕が半ば押し切るような形で週末少し時間は早かったが僕達はヨウコさんの家を訪ねた。
ヨウコさんは全身で相好を崩しながら、僕達を迎えてくれた。
リカとアキラさんが顔を会わせた時、二人とも驚いた様子で顔を見合わせていた。アキラさんはリカの働く図書館によく通っていて、美術書や哲学書を読み漁っているのだそうだ。貸し出しカウンターにいるリカとは当然顔見知りだった。これには僕とヨウコさんの方が驚いた。
「さてと、まだ何も用意してないのよ。買い物に行かなくちゃ。重いからユウくん付いてきてくれる?」
僕はリカの様子をチラッと見て大丈夫そうだったので、ヨウコさんと一緒に近くのスーパーまで出かけた。スーパーに着くまでの間、ヨウコさんは一言も喋らなかった。僕も隣で黙ったまま付いていった。
僕達は山盛り二カゴの買い物をレジに持ち込んで会計をした。このスーパーでは既にバーコード・スキャナで値段を読み取るようになっていたが、どう見ても僕が手でレジを打った方が速いような気がした。ヨウコさんにもレジの女の子にも何も言わなかったけど。レジを通って更に山盛りになった二カゴの買い物を、僕達は慎重に三つの袋に詰め、二つを僕が一つをヨウコさんが持った。
店を出るとすっかり陽は落ちていて、街の果てに少し紫色とオレンジのグラデーションが残る程度になっていた。僕達は商店街を出ると、雑居ビルの立ち並ぶ通りを歩いていたが、二人ともふと立ち止まって、人目につきにくいビルとビルの間の暗がりを見ていた。ふとヨウコさんは僕の手を引っ張ると、その片方のビルに入っていった。二階に上がるとカラオケの音がうるさく響いていて、僕達は三階の誰もいないオフィスフロアのトイレに駆け込んだ。三つの買い物袋をドサッドサッとトイレの床に置くのももどかしく、僕達はお互いの体をまさぐった。重なり合うカラオケの歌声を聞きながら、僕達は性急に貪りあった――。
「ごめーん、遅くなっちゃって。何にしようかなかなか決まらなかったんだもん。ねえ、ユウくん」
僕達はすっかり待ちくたびれた様子のアキラさんとリカの目の前に買い物袋を戦利品のように得意げに置くと、ヨウコさんとリカが早速夕食の準備に取り掛かった。卵が二個割れていて、豆腐が崩れていたのには少しヒヤッとさせられた。
「リカちゃんとキミは幼なじみなんだってね」
アキラさんが興味深そうに僕に訊ねた。
「そして今は恋人同士だ。ありそうであまりない関係かもしれないな。だからかも知れないけど君たちには少し変わった雰囲気があるね。何て言うのかな、二人の関係性に関してだけど、まるで革命の同志のような透明な意志と硬直した未来のようなものを感じるな。まあ独特だよ」
僕は混乱しながらも納得していた。確かに僕達は互いのために死ねるかもしれないが、お互いの心と体を心底とろけさせ安らがせることは出来ないのかもしれない。
その夜は楽しかった。後ろ髪は引かれたものの僕達は電車のあるうちに引き上げることにした。
*
その後も僕とヨウコさんは関係を持ち続けた。関係? 一体どんな関係なんだ。僕達は決して最後の一線を越えることはなかったし、キスもしたことはなかった。僕達はある意味互いに依存しながらも、互いの感情を持ち込むのは避けた。もちろん話し合って明確に規定したわけでもない。ただそういった関係だったのだ。
リカもいぶかしがる様子を見せないわけではなかったが、彼女は決して僕を問い詰めたり、取り乱したりすることはなかった。僕達はそういう関係だった。
もちろん僕にとってリカは最愛で至福たるべき存在だ。それは何を犠牲にしても守られる必要がある。そうでなければ僕の、そしてリカの存在にどれほどの意味があるのだろうか。
ただ僕が変わっていくのと同様にリカにもこのところ変化が現れた。それはやはりヨウコさんの家に行ってから、徐々にだが僕に会うのを避けるようになったような気がした。たまに連絡が取れないこともあったし、会ってもいつも浮かぬ顔をしていた。
ある日、珍しく突然リカが僕のアパートに現れた。いつにも増して浮かぬ顔をしていたリカは、重そうな口を開いて話し始めた。
リカは妊娠しているという。もう三ヶ月だそうだ。もちろん僕の子供ではない。父親はアキラさんだった。ヨウコさんの家で会って以来、アキラさんが図書館に来るたびに会っていたそうだ。何故そんなことになったのか理由は聞かなかったが、わかるような気はした。
リカは高校に入った頃、父親の子供を堕ろしていた。だから今度はどうしても産みたいのだと言った。アキラさんには聞くまでもなく子供の父親になる気などないだろう。
「わかったよ」
俺は言った。
「子供は産むんだ。僕と一緒に育てよう。もちろんキミがそれでよければだけど」
リカは床にへたり込んで、大声で泣き出した。
「ユウと一緒にいたいよ。ずっとユウと一緒にいたいよ」
もう何を言っているかわからなかったが、リカは吠えるようにそう言って、細い腕を振り上げ僕をポカポカと殴った。
数日経ってリカはアキラさんに会って、もう会わないことを告げた。子供のことは言わずに。
僕もヨウコさんに会わなくて済むようにバイトを辞めた。すぐに新しいバイトを探さなくちゃいけないけど。
*
白い霧がたちこめるあの森の中で、僕はリカを抱いて洞穴の中にいた。僕達の間にはイチジクの葉にくるまれた赤ん坊がスヤスヤと寝息を立てていた。僕はリカの体に触れ、リカは僕の柔らかなペニスを握り締めていた。それは次第に膨張していきやがて隆々とはちきれんばかりに反り返った。リカが思わず声を上げると、赤ん坊が目を覚まし大声で泣き出した。するとたちこめていた霧がスゥッと晴れていき、矢のような鋭い日差しが洞穴の中を乱反射した。
僕とリカは赤ん坊越しに心の底からキスをした――。
(了)
コメント
_ トゥーサ・ヴァッキーノ ― 2007年04月01日 08時03分54秒
_ くれび ― 2007年04月02日 00時28分23秒
無花果読んでくれてありがとう。
「生きていく喜び」つらいですねぇ。ヴァッキーノさんはともかく、私は最近誰かが死んだり流血したりする話しか書いてないですからねぇ。
私はコースにはこだわらずお題次第で選びますが、今回は散策コースの方が難しいと判断しました。ちょっと考えたんですけど私には「腹の立つこと」で文章は書けそうもないと思ったからです。
そうはいっても「生きてい[く]喜び」はきびしい。日常でふと感じた生きている実感みたいなものじゃなくて(まあそれでもいいんですけど)、もっと根源的なレベルでの表出を求められているような気がしますからね。そうすると例えば逆説的にでもトリッキーにでも、ヴァッキーノさん一流のアイディアで見事に表現できるような気もするんですけど。
我が候補作は塾長の愛による書き直しを終えて、現在推敲待ちで眠っているところです。多分血は流れない話になると思います。
「生きていく喜び」つらいですねぇ。ヴァッキーノさんはともかく、私は最近誰かが死んだり流血したりする話しか書いてないですからねぇ。
私はコースにはこだわらずお題次第で選びますが、今回は散策コースの方が難しいと判断しました。ちょっと考えたんですけど私には「腹の立つこと」で文章は書けそうもないと思ったからです。
そうはいっても「生きてい[く]喜び」はきびしい。日常でふと感じた生きている実感みたいなものじゃなくて(まあそれでもいいんですけど)、もっと根源的なレベルでの表出を求められているような気がしますからね。そうすると例えば逆説的にでもトリッキーにでも、ヴァッキーノさん一流のアイディアで見事に表現できるような気もするんですけど。
我が候補作は塾長の愛による書き直しを終えて、現在推敲待ちで眠っているところです。多分血は流れない話になると思います。
コメントをどうぞ
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「危うい」っていう石の塊を削っていって、最後はいつも「清い」になるような。
で、どうします?
今回のお題!
どうも華やかで、明るいものや絶対の幸福感を表現するのが苦手なボクは、いつもくれびさんに共感してるんですが、もしかしたら、くれびさんも今回は悩むんじゃないかと思って、すがってみました。
「生きている」とかなら陰惨さがあるものが書けそうですけど、「生きていく」ですもん。「く」ってトコがみそですね。それを継続させる「喜び」も苦手。
こうなったら、あんまり考えないで、ドーンといきますか?