ジョリー・ロジャー ― 2007年09月18日 01時37分00秒
――ドーンという大きな音と共に砲弾が脇腹に命中し、もはや戦闘不能となった船はただ沈没するのを待つだけだった。船体はメキメキと音をたて、中央から二つに折れ曲がって今にも海に吸い込まれそうだった。
いかにも金持ちの乗っていそうな大型クルーザーに狙いをつけ旗を掲げたまではよかったが、ふいにどこからともなく駆逐艦が現われ、にわかに戦場と化した海の上は轟音と怒号に包まれた。いかに屈強な男達が乗った海賊船とはいえ、駆逐艦を相手にそう長く持ち堪えられるものではない。敵に近づくどころか、凄まじい砲撃や銃撃を浴びて人も船もいまや瀕死の状態だった。
船長はボートに財宝の詰まった宝箱を積み込むように指示し、残りの海賊達と共に船を離れることにした。彼らの見ている前で船は断末魔の叫びを上げながら海の底に消えていった。
船に最後の別れをしたのも束の間、今度は重くなりすぎたボートに水がどんどん入ってくる。海賊達は水をかき出しながら、仕方なく宝箱を捨てようとしたがこれがピクリとも動かない。ならばと次は箱を開けて中の宝を捨てようとしたが、どうやら鍵は船と一緒に沈んでしまったようだ。こうなればボートを捨てて海に飛び込むしかない。ぐるりを地平線に囲まれた洋上だが、運が良ければどこかに泳ぎ着けるかもしれない。海賊達は覚悟を決め次々と海に身を投じた。
ボートの上では宝箱に寄り添うように一人船長が立ち、遙か遠くを見つめていた。船長はロープで自分の体を宝箱にしっかりと括りつけると、どっかと座りこみ腕を組んで目を閉じた。そして海の中から見守る海賊達の目の前で、ゆっくりとボートもろとも海中に沈んでいき見えなくなった。
海は何事もなかったように静けさを取り戻し、地平線に沈む夕陽が空と海を赤く染め上げていった。そして程なく冷たい夜の闇が舞い降りて、空と海を一つにしていった。月も星も風もない、永遠を見通せそうな暗闇が海を包んでいた――。
http://bunshoujuku.asablo.jp/blog/2007/09/18/1804116
いかにも金持ちの乗っていそうな大型クルーザーに狙いをつけ旗を掲げたまではよかったが、ふいにどこからともなく駆逐艦が現われ、にわかに戦場と化した海の上は轟音と怒号に包まれた。いかに屈強な男達が乗った海賊船とはいえ、駆逐艦を相手にそう長く持ち堪えられるものではない。敵に近づくどころか、凄まじい砲撃や銃撃を浴びて人も船もいまや瀕死の状態だった。
船長はボートに財宝の詰まった宝箱を積み込むように指示し、残りの海賊達と共に船を離れることにした。彼らの見ている前で船は断末魔の叫びを上げながら海の底に消えていった。
船に最後の別れをしたのも束の間、今度は重くなりすぎたボートに水がどんどん入ってくる。海賊達は水をかき出しながら、仕方なく宝箱を捨てようとしたがこれがピクリとも動かない。ならばと次は箱を開けて中の宝を捨てようとしたが、どうやら鍵は船と一緒に沈んでしまったようだ。こうなればボートを捨てて海に飛び込むしかない。ぐるりを地平線に囲まれた洋上だが、運が良ければどこかに泳ぎ着けるかもしれない。海賊達は覚悟を決め次々と海に身を投じた。
ボートの上では宝箱に寄り添うように一人船長が立ち、遙か遠くを見つめていた。船長はロープで自分の体を宝箱にしっかりと括りつけると、どっかと座りこみ腕を組んで目を閉じた。そして海の中から見守る海賊達の目の前で、ゆっくりとボートもろとも海中に沈んでいき見えなくなった。
海は何事もなかったように静けさを取り戻し、地平線に沈む夕陽が空と海を赤く染め上げていった。そして程なく冷たい夜の闇が舞い降りて、空と海を一つにしていった。月も星も風もない、永遠を見通せそうな暗闇が海を包んでいた――。
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