Beginning of the End ― 2009年04月02日 14時14分51秒
ふと空を見上げると、そこにはいつもと変わらぬ平板な青い空があった。それは頭上から三メートルくらいにあるようにも見えるし、三光年離れた彼方に浮かんでいるようにも見えた。僕の目に映る全てのものははるか遠くの一点を目指して慌しく収束を始めていて、足元を掠めるようにしてその後を双子の猫が追いかけていった。似ても似つかぬ双子だったがとても仲が良さそうだった。時々立ち止まってはお互いの体を舐め合っている。今日はとても大切な日だったはずだが、他のほとんどの一日と同じようにそれほど意味のない日だったような気もしてきた。
忙しげにすれ違う人たちはまるで僕が透明人間にでもなったように僕の体を無遠慮にすり抜けていく。静かな音が重い風を伴って背後に広がり、振り向くと双子の猫は潰れて地面にはり付いていた。
目の前には十年来変わらぬ妻の顔があった。僕に向けられた微笑は何かにひどく絶望しているように(あるいは何かに怯えているように)も見えた。僕は妻を慰めようとして妻の顔を見るが、どうしても顔がわからない。妻が何かを喋っていたが、それはもう意味のある言葉として僕の耳には届かなかった。僕は妻のために買ってきた指輪を箱から取り出して妻の指に嵌めようとしたが、指を捜すきっかけすらつかめず虚ろに空を切った。
どうやらここで僕は終わり、そしてここから君が――少なくとも僕でない何かが――始まる。僕の後ろには'何もない'空間が永遠に拡がっていて、そこには潰れた猫がひっそりと転がっているだけだった。
忙しげにすれ違う人たちはまるで僕が透明人間にでもなったように僕の体を無遠慮にすり抜けていく。静かな音が重い風を伴って背後に広がり、振り向くと双子の猫は潰れて地面にはり付いていた。
目の前には十年来変わらぬ妻の顔があった。僕に向けられた微笑は何かにひどく絶望しているように(あるいは何かに怯えているように)も見えた。僕は妻を慰めようとして妻の顔を見るが、どうしても顔がわからない。妻が何かを喋っていたが、それはもう意味のある言葉として僕の耳には届かなかった。僕は妻のために買ってきた指輪を箱から取り出して妻の指に嵌めようとしたが、指を捜すきっかけすらつかめず虚ろに空を切った。
どうやらここで僕は終わり、そしてここから君が――少なくとも僕でない何かが――始まる。僕の後ろには'何もない'空間が永遠に拡がっていて、そこには潰れた猫がひっそりと転がっているだけだった。
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