砂利山 ― 2006年06月01日 16時37分33秒
僕が田舎の家に住んでいた幼い頃、近所の子供たちと毎日ザリガニを捕ったり、秘密基地を作ったりして遊んでいた。キラキラと輝くその時代を、僕は夢中になって走り回っていた。
ある日近くの空き地に行くと、大きな砂利の山が二つ出来ていた。興奮した僕たちは二手に分かれてそれぞれの山の麓に陣取り、相手めがけて砂利を投げ合い始めた。僕たちは我を忘れ、危ういスリルに酔った。
しかし僕の投げた砂利がふいに飛び出してきた相手の頭に命中し、その子はギャッと言ったきりその場に倒れ込んでしまった。
子供たちの歓声に代わって、静かな風の音が砂利山を包んだ。
その子は僕と同級生のカマボコ工場の跡取り息子で、傍に寄るといつも生臭い匂いがして僕を滅入らせた。
彼の怪我は幸い大事には至らなかったが、そのまましばらく入院することになった。僕はその間何度か母親に連れられて彼の見舞いに行き、話をしたり遊んだりするうち以前よりずっと親密になっていった。
彼が退院する頃には砂利の山はすっかり跡形もなくなっていて、そこはまるで遺跡のように意味もなくぽっかりと空いているだけだった。
僕はもうそれまでのようにみんなと一緒に遊ばなくなった。砂利山の件で懲りたこともあるし、両親から近いうちに遠方へ引越すことを知らされてもいたからだ。
引越しの噂が耳に入ったのか、ある日彼が家に遊びに来るよう誘ってくれた。
病院で会って以来になる彼の母親は僕をニコニコと迎えてくれ、おやつにカマボコではなくシュークリームを出してくれた。
工場の隣にある製材所で、彼がおがくずの中から掘り出したカブト虫の幼虫は、ダイヤモンドのようにピカピカに光っていた。
僕は引越しをして、その夏二匹のオスと一匹のメスのカブト虫を羽化させた。
僕は自分の子供とカブト虫を採りに行くような歳になったが、今でも砂利を踏みつける音を耳にすると、心の片隅でカッと小さな灯が灯るような気がするのだ。
http://mayu-kids.asablo.jp/blog/2006/05/16/367485
ある日近くの空き地に行くと、大きな砂利の山が二つ出来ていた。興奮した僕たちは二手に分かれてそれぞれの山の麓に陣取り、相手めがけて砂利を投げ合い始めた。僕たちは我を忘れ、危ういスリルに酔った。
しかし僕の投げた砂利がふいに飛び出してきた相手の頭に命中し、その子はギャッと言ったきりその場に倒れ込んでしまった。
子供たちの歓声に代わって、静かな風の音が砂利山を包んだ。
その子は僕と同級生のカマボコ工場の跡取り息子で、傍に寄るといつも生臭い匂いがして僕を滅入らせた。
彼の怪我は幸い大事には至らなかったが、そのまましばらく入院することになった。僕はその間何度か母親に連れられて彼の見舞いに行き、話をしたり遊んだりするうち以前よりずっと親密になっていった。
彼が退院する頃には砂利の山はすっかり跡形もなくなっていて、そこはまるで遺跡のように意味もなくぽっかりと空いているだけだった。
僕はもうそれまでのようにみんなと一緒に遊ばなくなった。砂利山の件で懲りたこともあるし、両親から近いうちに遠方へ引越すことを知らされてもいたからだ。
引越しの噂が耳に入ったのか、ある日彼が家に遊びに来るよう誘ってくれた。
病院で会って以来になる彼の母親は僕をニコニコと迎えてくれ、おやつにカマボコではなくシュークリームを出してくれた。
工場の隣にある製材所で、彼がおがくずの中から掘り出したカブト虫の幼虫は、ダイヤモンドのようにピカピカに光っていた。
僕は引越しをして、その夏二匹のオスと一匹のメスのカブト虫を羽化させた。
僕は自分の子供とカブト虫を採りに行くような歳になったが、今でも砂利を踏みつける音を耳にすると、心の片隅でカッと小さな灯が灯るような気がするのだ。
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